AppleシリコンのM1チップを搭載したMacBook Air(M1)、MacBook Pro 13インチ(M1)、Mac mini(M1)を2020年11月となりました。
Appleは2020年末から2年かけてIntelからAppleシリコンチップに移行することを明らかにしていましたが、その第1ステージとしてMacBook Air、MacBook Pro 13インチ、Mac miniの3機種がM1チップを搭載しモデルチェンジしました。
AppleシリコンのM1チップで大きく性能が向上するだけでなく発熱が抑えられてバッテリー駆動時間が大幅に向上。また、同じアーキテクチャになったiPhoneとiPadの親和性が高まるので可能性が広がります。
この記事の目次
macOSのバージョンが10 → 11に
2020年秋に正式リリースされる新しいmacOSは「Big Sur(ビッグサー)」というカリフォルニア州にある地名が命名され、内部バージョンが「10.16」ではなく「11」にバージョンアップしています。
PowerPC → Intelは「10.3」→「10.4」とメジャーアップデートだったのに対して、Intel → Appleシリコンは「10.15」→「11」とビッグメジャーアップデートという位置付けとなります。
このバージョンアップでAppleの本気度が伝わりますよね。Mac OS 9 → Max OS Xくらい大きな変革が期待できるのかも。そして、Mac OSのバージョン10は「15」で幕を閉じることになります。
僕の人生の半分を支えてくれてありがとう。
Macアーキテクチャの歴史
Macは過去に2回、CPUアーキテクチャの変更をしています。
- 1984年〜1990年(Macintosh):Motorola 68000
- 1991年〜2005年(PowerPC Mac):IBM PowerPC
- 2006年〜2020年(Intel Mac):Intel x86、x64
- 2020年11月〜(Apple Mac):Apple Silicon
Motorola時代のMacintoshは触ったこともないMacですが、以前務めていた会社に設置してあった記憶があります。(産業機器を製造している会社だったのでおそらく検証用マシン)
PowerPC MacはiMac G3、G4、G5など学生時代によく見かけたMacでとても懐かしい端末。個人的に本格的にMacに触れたのはIntel Core Duoを搭載したiMacからでした。
PowerPC → Intelアーキテクチャへの移行時もRosetta(ロゼッタ)を使うことによって、PowerPCのアプリケーションをエミュレーションによって実現していました。
Mac OS X 10.4〜10.6までRosettaを内蔵していて2〜3年ほどかけてPowerPCからIntelへ移行しました。今回のIntel → Apple Siliconも2年かけて移行するので同じようなスケージュールとなります。
M1チップをMacに搭載するメリット
デスクトップ型とノート型のMac
MacはiMacをはじめMac mini、Mac Proといったデスクトップ型と、MacBook Air・Proのノート型の二つの製品ラインがあります。
デスクトップ型に求められることは、画面の大きさによる作業効率の良さと処理性能の高さですよね。ノート型は処理性能が高いことも求められますが駆動時間の長さも必要不可欠となります。
で、今回発売されたのがMacBook Air(M1)、MacBook Pro 13インチ(M1)、Mac miniの3機種となります。
MacBook Air | MacBook Pro | Mac mini | |
ディスプレイ | 13.3インチ | デスクトップ型 | |
解像度 | 2,560 x 1,600ピクセル | – | |
SoC | M1チップ | ||
メインメモリ | 8GB or 16GB | ||
ストレージ | 256GB/512GB/1TB/2TB | ||
生体認証 | Touch ID | Touch Bar + Touch ID | – |
ファン | 無 | 有 | |
バッテリー駆動時間 | 最大18時間 | 最大20時間 | – |
価格 | 104,800円〜 | 134,800円〜 | 72,800円〜 |
デザインについては従来のIntelモデルと全く同じなので見た目でAppleシリコンを搭載しているかどうかは判別できません。
しかし、IntelからM1チップに刷新されたことより、性能と電力効率が向上しMacBook Airだと12時間から18時間に、MacBook Proは10時間から20時間と大幅にバッテリー駆動時間が向上します。
個人的にノート型のMacBookで負荷のかかる作業はしないのでバッテリー駆動時間が大きく向上するのはめちゃくちゃ嬉しすぎます。
M1チップでパフォーマンスと省電力の両立
従来型のMacはロジックボード上にCPU、メモリ、コントローラーチップを実装したものとなっていました。
Appleシリコン「M1」はこれらの機能を1つのチップに統合したSoC(システム・オン・チップ)となっていて、省スペース化を実現しただけでなく電力効率も大幅に向上しています。
M1チップはiPhone 12、iPhone 12 Proに搭載されているA14 Bionicのトランジスタ数108億個を上回る160億個となりさらに性能が向上し機械学習のできるニューラルエンジンも搭載しています。
また、メインメモリが超高速ユニファイドメモリとなりCPU、GPU、Neural Engineの間でやり取りされるデータを、複数のアプリが効率良く共有できるようになっています。
MacBook Air | MacBook Pro | Mac mini | |
ディスプレイ | 13.3インチ | デスクトップ型 | |
解像度 | 2,560 x 1,600ピクセル | – | |
SoC | M1チップ | ||
CPU | 高性能コア4 + 高効率コア4 | ||
GPU | 7コア or 8コア | 8コア | |
NPU | 16コアNeural Engine(毎秒11兆回) | ||
メインメモリ | 8GB or 16GB(4,266 MHz LPDDR4X ユニファイドメモリ) | ||
ストレージ | 256GB/512GB/1TB/2TB |
例えば、M1チップを搭載したMacBook Airは、IntelチップのMacBook Air(2020)と比較して最大3.5倍高速になっていて、GPUの性能も最大5倍も高速になっているとのこと。
- Final Cut Pro:3.9倍速いProResトランスコード
- Final Cut Pro:5.4倍速い3Dタイトルのレンダリング
- Xcode:3.6倍速いプロジェクトビルド
- Logic Pro:2.5倍多いAmp Designerプラグイン
- Adobe Lightroom:2.3倍速いイメージの書き出し
しかも、電力効率が向上しているのでバッテリーの持ちが大きく向上しているという、まさにモバイルノートのMacBook Air、Proのためにあるチップといってもいいでしょう。
現在のMacBook AirやMacBook Pro 13インチの実際の駆動時間は6時間ほどでしたが、M1チップを搭載したモデルは実測値で10時間〜14時間くらいが電池持ちとなっていました。
iPhoneやiPadに搭載しているAプロセッサをベースとしたApple SiliconをMacにも搭載しパフォーマンスと電力効率の両立を図っています。
Apple SiliconのMacが目指すところは青色を示したところ。ノート型の電力効率を維持したままデスクトップ型のパフォーマンスのあるところにApple Siliconを搭載することによって実現することになります。
M1チップとIntelプロセッサの性能をGeekbench 5で比較してみました。
モデル | MacBook Pro 13インチ | ||
---|---|---|---|
モデル | M1 | Intel | |
年式 | 2020 | 2019 | |
CPU | M1 @3.2GHz (高性能4コア + 高効率4コア) |
第10世代Core i5 @2.0GHz 4コア |
第8世代Core i5 @1.4GHz 4コア |
GPU | M1(8コア) | Iris Plus Graphics | Iris Plus Graphics 645 |
NPU | 16コア | – | – |
シングルコア | 1735 | 1197 | 934 |
マルチコア | 7572 | 4407 | 3976 |
OpenCL | 19147 | 8764 | 7616 |
Metal | 21819 | 10347 | 7017 |
シングルコアスコアで1.5倍ほど、マルチコアスコアは1.7倍ほど性能が向上しているのが分かります。グラフィック性能も2倍ほど向上しています。スコア上でも第10世代Core i5よりも大きく向上しているのが分かります。
M1チップは4,266 MHzで動作するLPDDR4Xユニファイドメモリを内蔵していてCPU、GPU、NPUなどがダイレクトにアクセスできるので8GBと少ない容量でもかなり快適に動作してしまうのが凄いところです。
この動画ではM1チップに8GBのメインメモリを搭載したMac miniでトリプルモニターにして動作させた時の動作を紹介しています。参考にしてみてください。
M1チップでMacは快適に動くのか
M1チップは内部的な設計(アーキテクチャ)が従来のIntelチップと全く異なります。
- M1チップ:ARMアーキテクチャ
- Intelチップ:x86/64アーキテクチャ
もちろん、最新のmacOS Big SurはARMアーキテクチャに対応したバージョンとなっているので、今まで通り問題なくmacOSは動作しています。というか、かなり快適に動作しているので一般的な使用用途においては全く問題ないレベルと言ってもいいでしょう。
アクティビティーの「アーキテクチャ」の部分でAppleアプリとして動作しているのか、Intelアプリとして動作しているのか確認することができます。
Intelで動作しているのはサードパーティ製のアプリのみで、macOSの重要な部分はすでにARMアーキテクチャに移行しているのがわかります。
なので、基本的にApple純正のソフトウェアに関してはM1チップに対応しているので問題なく動作するとみていいでしょう。もし不具合があったとしてもすぐに改善されると思います。
Final Cut Proもネイティブに動作する
Apple純正の動画編集アプリFinal Cut ProもM1チップにすでに対応済みとなっており、とにかく快適に作業ができるようになっています。
ほんとに快適に作業できるようになっていてタイムラインのカット作業もサクサクすることができます。下手するとiMac 27インチ(2020)よりも快適に動作する部分があるかもしれない、それくらい快適に動作しています。
WWDC 2020ではM1チップを搭載したモデルで4K動画を3本ストリームで編集できるパフォーマンスがあるとしていました。
たしかに、実際に使ってみてこれくらいの性能は持っているとみて良さそうです。
MacBook Air、Mac miniは8GBのメインメモリのモデルを購入して実際にFinal Cut Proで作業しましたが、問題なく動作しています。8GBのメインメモリでもフルHDの動画編集ならとくにメモリ不足に陥るような場面はありませんでした。
ただし、4Kの動画編集になると8GBだとレインボーカーソルが表示して1秒ほどフリーズします。作業できないことはないですが、4K動画を扱うなら16GBのメモリは必要でしょう。
Office、AdobeもM1チップ対応予定
問題はサードパーティ製のアプリケーションが動作するのかというところですが、Microsoft Office、Adobeのクリエティブアプリなどの必要不可欠なアプリがAppleシリコンのM1チップでも動作するように開発されています。
正式リリースは2020年末から2021年の初めになると思いますが、近いうちにM1チップを搭載したMacでもネイティブに動作することになるでしょう。
WWDC 2020ではMicrosoft OfficeのWord、Excel、PowerPointがネイティブに動作する様子が公開されていました。
Lightroomで写真管理、現像も。
Photoshopも動作するので画像編集もできます。
Photoshopに関してはすでにM1チップで動作するベータ版が公開されていて使って作業ができるようになっています。控えめにいってもM1チップ対応のPhotoshopは爆速です。
Mac miniなのに今まで体感したことがないレベルの画像編集ができるようになります。とりあえず、主要アプリはいち早くAppleシリコンのMacでネイティブ動作するように最適化されていくのでマニアックなソフトウェアを使わない限り、問題は少ないのかもしれません。
IntelをエミュレートするRosetta 2
Apple SiliconのMacに対応していないIntelベースのアプリケーションはRosetta 2によってエミュレートして動作することになります。
基調講演で3Dゲームや3DモデリングするソフトウェアをRosetta 2で動作させていましたが、快適に使うことができていました。
Power PC → IntelのRosettaは動作は遅かったですが、Adobe IllustratorやPhotoshopも問題なく動作することができていたので、今回のRosetta 2も期待していいでしょう。
実際にRosetta 2を介してAdobeのIllustratorやPhotoShopを使って作業をしましたが、問題なく使うことができました。ネイティブに動作するiMac 27インチと比べともっさりしてしまう場面はありますが、かなり高速に動作していたことに驚きですね。
ただ、ふとした瞬間にフリーズしてしまうこともあるので完璧ではないので仕事で使うことが多いならM1チップに完全対応してから乗り換えた方がいいかと思います。
少なくとも、Surface Pro Xのx86 → ARMのエミュレート機能よりも使えそうな雰囲気ですよね。Surface Pro Xのエミュレートはx64アプリは非対応でx86しかARMエミュレートできないので使えるシーンが微妙なところがあります。
iPhone、iPadのアプリが使える
AppleシリコンのMacはiPhone、iPadのAプロセッサがベースとなってるので、iOSアプリをMacで起動できるようになります。
タッチパネルのないMacでiOSアプリをどれだけ快適に使うことができるかは未知数ですが、コントローラーを接続してiOSのゲームを楽しむということはできるので、色々と楽しめそう。
Intel MacはWindowsと比べてもゲームの数が少なかったのでiMac 27インチなどの高性能なグラフィック性能を活かす機会がなかった方も多いかと思いますが、Appleシリコンを搭載したMacならiOSのゲームがMacでも遊べるようになり最強のゲームマシンになる可能性も秘めています。
ちなみに、全てのアプリが使えるわけではないので注意です。
Windows、boot campはどうなる?
boot campを使ってWindows 10を起動している方も多いと思いますが、おそらくboot campによるWindows起動はできなくなりそう。
Appleの仮想化フレームワーク「Hypervisor」がアップデートしてParallels DesktopでARMのDebian GNU/Linuxを動かすことができるそうです。Windows が動作するかどうかは、明らかにされてないので難しいのかな…?
Macを買えばWindowsも使える。だから、Macを買う。という方も一定数いると思いますが、どうなるのか気になるところ。
M1チップを搭載したMac
M1チップを搭載したのはMacBook Air、MacBook Pro 13インチ、Mac miniの3つの機種となっています。デザインは従来のIntelモデルと全く同じとなっています。
MacBook Air(M1)
MacBook Air(M1)は、13.3インチのRetinaディスプレイにTouch IDを内蔵したMagic Keyboard、2つのThunderbolt 3.0 / USB-Cを搭載したモデルとなっています。
- ディスプレイ:13.3インチ(2,560 × 1,600ピクセル)、400ニト、広色域(P3)、True Toneテクノロジー対応
- M1チップ(CPU8コア + GPU 7コア or 8コア)
- メインメモリ:8GB or 16GB
- ストレージ:256GB〜2TB
- 生体認証:Touch ID
- 通信性能:Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0
- USB-C:2つ(Thunderbolt 3.0、USB 4.0)
- バッテリー駆動時間:最大18時間
- 本体サイズ:30.41 × 21.24 × 0.41 〜 1.61cm
- 重量:1.29kg
M1チップ(GPU 7コアタイプ)のMacBook AirはCPUの処理性能が最大3.5倍、グラフィック処理性能が最大5倍、SSDストレージの転送速度が最大2倍向上しています。
さらにバッテリー駆動時間が12時間から18時間に伸びたことで従来のモデルよりも高性能なのに1日中使えるマシンになっています。
M1チップを搭載したMacBook Airはファンを搭載していないファンレス機構となっているため負荷のかかる作業をしても静かさを維持することが可能となっています。
後継機種のM2 MacBook Airも2022年に発売となりました。
MacBook Pro 13インチ(M1)
MacBook Pro 13インチ(M1)は、13.3インチのRetinaディスプレイにTouch IDとTouch Barを内蔵したMagic Keyboard、2つのThunderbolt 3.0 / USB-Cを搭載したモデルとなっています。
- ディスプレイ:13.3インチ(2,560 × 1,600ピクセル)、500ニト、広色域(P3)、True Toneテクノロジー対応
- M1チップ(CPU 8コア + GPU 8コア)
- メインメモリ:8GB or 16GB
- ストレージ:256GB〜2TB
- 生体認証:Touch ID
- 通信性能:Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0
- USB-C:2つ(Thunderbolt 3.0、USB 4.0)
- バッテリー駆動時間:最大20時間
- 本体サイズ:30.41 × 21.24 × 1.56cm
- 重量:1.4kg
M1チップのMacBook Pro 13インチはCPUの処理性能は最大3.5倍、グラフィック処理性能が最大6倍ほど向上しています。そして、バッテリー駆動時間がAirを上回る20時間という長時間駆動を実現しています。
MacBook Airと性能差をあまり感じないですが、ファンを内蔵していることから高負荷時の性能が異なるものと思われます。例えば、動画編集による書き出し時間などで差が出てくることになりそうです。
なお、MacBook Pro 13インチはUSB-Cを4ポート搭載している上位モデルはIntelチップのままとなっています。
後継機種のM2 MacBook Pro 13インチが2022年に発売となりました。
M1 Pro・M1 Maxを搭載したMacBook Pro 14インチ・16インチも2021年に発売となっています
Mac mini(M1)
Mac mini(M1)はデスクトップ型のMacで基本的なスペックはMacBook Pro 13インチ(M1)と同じとなっています。
- M1チップ(CPU 8コア + GPU 8コア)
- メインメモリ:8GB or 16GB
- ストレージ:256GB〜2TB
- 通信性能:Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0
- USB-C:2つ(Thunderbolt 3.0、USB 4.0)
- USB-A:2つ
- HDMI 2.0ポート
- 本体サイズ:19.7 × 19.7 × 3.6cm
- 重量:1.2kg
CPU性能は最大3倍高速。グラフィックスは最大6倍高速。Appleで最も先進的なNeural Engineにより、機械学習は最大15倍高速となっています。
もちろん、ファンを内蔵しているので高負荷作業もM1チップの性能を最大限引き出すことが可能となっています。しかも、IntelチップのMac miniよりも消費電力を最大60パーセント低く抑えられています。
ディスプレイは最大6K解像度の出力まで対応しているのでPro Display XDRを接続して使うこともできます。
→ Mac miniを詳しく見る
MacBookの比較・おすすめはこちらです。
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なお、2021年5月発売のiPad ProにもAppleシリコンのM1チップを搭載しています。M1チップはAチップをMac向けにカスタマイズしたモノですが、基幹部分は同じです。
iPadとMacで同じチップを搭載するという流れは自然なことなのかもしれませんね。
→ iPad Pro 11インチ・12.9インチはこちら
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