
AppleのiPhoneのSoC(システムオンチップ)はiPhone 4sからAppleが独自に開発しているAチップを搭載していますが、新機種が発売となるたびにSoCの性能が向上しています。
ここでは、iPhoneとiPadのA8、A9、A10 Fusion、A11 Bionic、A12 Bionic、A13 Bionic、A14 Bionic、A15 Bionicのスペック、性能、実際の動作速度の違いについて詳しく書いています。
この記事の目次
iPhoneのCPUプロセッサの性能比較
Aプロセッサのスペック
iPhoneを動作させるための重要パーツの一つがSoC(システムオンチップ)です。SoCはCPU、GPU、NPU、IOなどを一つのパッケージの中に埋め込んだものでAチップはAppleが独自開発しています。
2015年〜2018年のiPhoneに搭載しているチップは以下のとおりです。
iPhone 8/8 Plus/X | iPhone 7/7 Plus | iPhone 6s/6s Plus | iPhone 6/6 Plus | |
プロセッサ | A11 Bionic | A10 Fusion | A9 | A8 |
CPUコア数 | 2 + 4 = 6コア | 2 + 2 = 4コア | 2コア | |
内蔵GPU | Apple GPU(3コア) | PowerVR 7XT GT7600 Plus(6コア) | PowerVR 7XT GT7600(6コア) | PowerVR 6XT GX6450(4コア) |
ニューラルエンジン | 1コア(毎秒6000億回) | – | – | – |
プロセスルール | 10nm | 16nm | 20nm |
A10 FusionはiPhone 7だけでなくiPad(第7世代)にも採用されていて幅広い端末に搭載されていて2020年になった今現役で使うことができるプロセッサとなっています。
A11 Bionic以降のチップは機械学習ができるニューラルエンジンを搭載しARや空間認識機能が向上しています。これにより、全体的な速度向上、電力効率が向上しバッテリーの持ちが向上しています。
2018年〜2021年のiPhoneのSoCは以下のとおりです。
iPhone 13 | iPhone 12 | iPhone 11、SE2 | iPhone XS、XR | |
プロセッサ | A15 Bionic | A14 Bionic | A13 Bionic | A12 Bionic |
CPU | 2 + 4 = 6コア | |||
GPU | Apple GPU(5 or 4コア) | Apple GPU(4コア) | Apple GPU(4コア) | |
Neural Engine | 16コア(毎秒15.8兆回) | 16コア(毎秒11兆回) | 8コア(毎秒6兆回) | 8コア(毎秒5兆回) |
プロセスルール | 5nm | 7nm+ | 7nm |
iPhone 13・13 ProはA15 Bionic、iPhone 12・12 ProはA14 Bionicを搭載しています。iPhone 11・iPhone 11 Pro、iPhone SE(第2世代)のA13 Bionicも性能と省電力を両立していますがA14 Bionicはさらに微細化しトランジスタ数が118億個、A15 Bionicは150個と高性能化しています。
Aプロセッサの性能比較
各プロセッサの性能をGeekbench 5で計測してみました。

プロセッサ | A10 Fusion | A9 | A8 |
---|---|---|---|
モデル | iPhone 7 | iPhone 6s/SE | iPhone 6 |
シングルコア(CPU) | 714 | 548 | 141 |
マルチコア(CPU) | 1173 | 995 | 313 |
Metal(GPU) | 2815 | 1836 | 451 |
ブレイクスルーとなったのがiPhone 6s/6s PlusとiPhone SE(第1世代)に採用されているA9チップとなっていて、A8 → A9により3倍もCPUの性能が向上しています。
実際の動作速度もA8のiPhone 6はかなりモッサリしていますが、A9チップを搭載しているiPhone 6s・iPhone SEは普通に動作しますし、まだ現役で使うことができる性能を持っていると感じます。
A11 Bionicプロセッサ以降は機械学習ができるニューラルエンジンを搭載し空間認識の処理ができるようになりました。Face IDの顔認識などはニューラルエンジンで処理をしていますがARの処理などもしています。
Geekbench 5でスコアを計測してみました。

プロセッサ | A14 Bionic | A13 Bionic | A12 Bionic | A11 Bionic |
---|---|---|---|---|
モデル | iPhone 12 Pro | iPhone 11 Pro | iPhone XS | iPhone X |
シングルコア(CPU) | 1594 | 1334 | 1116 | 901 |
マルチコア(CPU) | 4097 | 3378 | 2309 | 2048 |
Metal(GPU) | 9156 | 7717 | 5492 | 3810 |
2020年モデルのiPhone 12 mini、iPhone 12、iPhone 12 Pro、iPhone 12 Pro MaxのSoCはA14 BionicはiPhone 11 ProのA13 BionicよりもCPUが25%、GPUが30%性能が向上しています。
世代を重ねるごとにプロセッサの性能が向上し、A14 Bionicは5nmの微細プロセスで製造されて処理性能を上げつつ、省電力性能を維持しているのはさすがです。
iPhone 13シリーズのA15 BionicはモデルによってGPUのコア数が異なっており、iPhone 13 Pro、iPhone 13 Pro Maxは5コアGPU、iPhone 13、iPhone 13 miniは4コアGPUとなっています。

プロセッサ | A15 Bionic | |
---|---|---|
モデル | iPhone 13 Pro / 13 Pro Max | iPhone 13 / 13 mini |
シングルコア(CPU) | 1723 | 1716 |
マルチコア(CPU) | 4757 | 4539 |
Metal(GPU) | 14479 | 11222 |
CPUの性能はほぼ同じですがGPUの性能は5コアGPUのA15 Bionicを搭載しているiPhone 13 Proの方がスコアが高くなっています。
実際の使用感はそこまで大きな違いは出てこないですが、iPhone 13 Proは120Hzのリフレッシュレートに対応していたり、ProRes撮影ができるなどiPhone 13よりも負荷のかかる機能が使えるのでその対処と見ていいでしょう。
動作速度の違いを比較
A10とA8 動作速度比較(iPod touch)
A10 Fusionを搭載しているiPod touch(第7世代)とA8のiPod touch(第6世代)の動作速度の違いを比較してみました。A10 FusionとA8プロセッサの処理速度の違いが一番分かりやすいような気がしますね。
iPod touch(第6世代)は普通にインターネットするだけでも動作速度が遅くもたついていますがiPod touch(第7世代)はブラウザ、App Store、地図アプリの快適性などすべての動作において快適です。
A11・A10の動作速度比較(iPhone)
A11 Bionicを搭載しているiPhone 8とA10 FusionのiPhone 7の動作速度を比較してみました。
iPhone 7のA10 Fusionは3年ほど前のSoCですが性能が高くて処理速度が十分速いのでA11 Bionicを搭載しているiPhone 8と比較して大きな差があるわけではないです。
少しだけiPhone 8よりも読み込みと描画速度が速いかな…ってレベルです。ただし、iOSのバージョンが最新のものになるたびに動作速度が遅るので最新のiOS 15だとiPhone 7はもたつきがあります。
A12・A11 動作速度比較(iPhone)
A12 BionicのiPhone XRとA11 BionicのiPhone 8の動作速度を比較してみました。
少しだけiPhone XRの方が表示速度が速いですが体感はほぼ同じ動作速度となっています。なお、iPhone XS、iPhone XS MaxもA12 Bionicを搭載しています。
A13・A11 動作速度比較(iPhone)
A13 BionicのiPhone 11と、A11 BionicのiPhone 8 Plusの動作速度を比較してみました。
トータルでiPhone 11の方が快適に動作していますがiPhone 8 Plusでもそれなりに動作しています。ブラウジングをしたり、SNSをするくらいなど一般使いならまだまだ使えそうです。
A13 Bionicは高性能なSoCでA12 Bionicと比較し20%高速、40%省電力になっていますが、さらにiPhone 11 ProはXSよりも4時間も電池持ちが改善しています。
A15・A13 動作速度比較(iPhone)
iPhone 13のA15 BionicとiPhone 11のA13 Bionicで動作を比較してみました。
スクロールの表示がiPhone 13の方がカクツキがなかったりと全体的に快適に動作していますが、iPhone 11も読み込み、描画速度は最新のiPhoneとほぼ同じとなっています。
さらに、動作が重いと言われているゲーム「原神」の動作も比較してみました。左がiPhone 13(A15 Bionic 4GPU)、右がiPhone 11(A13 Bionic)です。
どちらも画質設定は「高」でフレームレートはiPhone 13の方が高く滑らかに動いています。iPhone 11も快適に動作してますがたまにコマ落ちがあり少し無理してる感はあります。
iPad CPUプロセッサの比較
1世代前のiPad(第8世代)、iPad mini(第5世代)、iPad Air(第3世代)に搭載しているSoCは以下のとおりで、通常モデルのiPadはiPhoneと同じAチップとなっています。
iPad(第8世代) iPad Air 3 iPad mini 5 |
iPad Pro 10.5 | iPad(第7世代) | iPad Pro 9.7 | |
プロセッサ | A12 Bionic | A10X Fusion | A10 Fusion | A9X |
CPUコア数 | 2 + 4 = 6コア | 3 + 3 = 6コア | 2 + 2 = 4コア | 2コア |
内蔵GPU | Apple G11P(4コア) | Apple GPU(12コア) | PowerVR 7XT GT7600 Plus(6コア) | PowerVR 7XT GTA7850 Plus(12コア) |
ニューラルエンジン | 8コア(毎秒最大5兆回) | – | – | – |
プロセスルール | 7nm FinFET | 10nm FinFET | 16nm FinFET |
iPad Proに採用されているAチップはグラフィック性能を強化したXバージョンとなっています。
Geekbench 5による各プロセッサの性能を比較しました。
プロセッサ | A12 Bionic | A10X Fusion | A10 | A9X |
---|---|---|---|---|
モデル | iPad(第8世代) iPad Air 3 iPad mini 5 |
iPad Pro 10.5 | iPad(第7世代) | iPad Pro 9.7 |
シングルコアスコア | 1110 | 830 | 750 | 640 |
マルチコアスコア | 2700 | 2200 | 1400 | 1350 |
Metalスコア | 5300 | 6900 | 3200 | 4100 |
GPUの処理性能はA10X Fusionが高くなっていましたが、A12 BionicはCPUの性能が高く今でも現役で使うことができるSoCとなっています。
2020年のiPad Pro 11インチ(第2世代)とiPad Pro 12.9インチ(第4世代)はA12Z Bionic、iPad Air(第4世代)はA14 Bionicを搭載しています。
iPad Air(第4世代) | iPad Pro(2020) | iPad Pro (2018) | |
プロセッサ | A14 Bionic | A12Z Bionic | A12X Bionic |
CPUコア数 | 2 + 4 = 6コア | 4 + 4 = 8コア | |
内蔵GPU | 4コア | 8コア | 7コア |
ニューラルエンジン | 16コア(毎秒最大11兆回) | 8コア(毎秒最大5兆回) | |
プロセスルール | 5nm | 7nm FinFET |
iPad Pro(2018)のA12X BionicはA12 BionicのGPU強化版でGPUのコアが4つから7つに増えています。iPad Pro(2020)のA12Z BionicはGPUのコア数が8つとなっています。
Geekbench 5の性能を比較してみました。
プロセッサ | A14 Bionic | A12Z Bionic | A12X Bionic |
---|---|---|---|
モデル | iPad Air(第4世代) | iPad Pro 11・12.9インチ(2020) | iPad Pro 11・12.9インチ(2018) |
シングルコアスコア | 1550 | 1140 | 1140 |
マルチコアスコア | 4200 | 4700 | 4700 |
Metalスコア | 12500 | 11800 | 11400 |
CPUの性能はiPad Proが死守していますがGPUの性能はiPad Air(第4世代)のA14 Bionicの方が上となっており、いかにA14 Bionicが高性能なチップかが分かります。
しかも、A14 Bionicの方がニューラルエンジンのコア数が多くて機械学習の処理はiPad ProよりもiPad Air(第4世代)が上でトータルの処理性能はiPad Airの方が高いのかもしれません。
現行のiPad Pro 11インチ・12.9インチはMacシリーズに採用しているM1チップを搭載しています。

プロセッサ | M1 | A12Z Bionic | A12X Bionic |
---|---|---|---|
モデル | iPad Pro(2021) | iPad Pro(2020) | iPad Pro(2018) |
シングルコアスコア | 1706 | 1140 | 1140 |
マルチコアスコア | 7311 | 4700 | 4700 |
Metalスコア | 20370 | 11800 | 11400 |
2021年モデルのiPad ProはA12Z Bionic → M1になったことで大幅に性能が向上しています。A12Z BionicのiPad Proでもかなり性能のいいSoCですが、M1になったことで動画編集もサクサクとこなせるようになります。
A12 BionicとA10X 動作速度比較(iPad)
iPad Air 3(A12 Bionic)とiPad Pro 10.5(A10X)の動作速度を比較してみました。
ほぼ同じ動作速度ですね。となるとCPUの世代が新しいiPad Air 3を購入した方がいい…ということになるのかもしれません。
https://www.sin-space.com/entry/ipadair-vs-ipadpro-10-5
A12 BionicとA10 動作速度比較(iPad)
iPad Pro 11インチ(A12X Bionic)とiPad(A10)の動作速度を比較してみました。
iPad(第6世代)とiPad Pro 11インチの性能差が一番わかりやすいですね。さすが、iPad Pro 11インチはいかなる操作もワンテンポ速く動作できているのがわかります。
ストレージ速度も高速化
iPhoneはCPUプロセッサだけではなくストレージの性能も向上していることが明らかになっています。
こちらのグラフはSSDストレージの読み込む速度を測定したグラフです。(Berefeats.com)

iPhone 6s Plusのストレージのデータ転送速度は713MB/sですが、iPhone7は20%ほど速い838MB/sとなっています。iPhone 6 Plusが192MB/sというにはめちゃくちゃ遅いですね…。
このようにiPhoneの性能は新モデルが出るたびに向上しています。つまり、最新型のiPhone XS/XS Max/XRのストレージの性能もさらに向上している可能性は高いということになります。
まとめ:A10 Fusion以降のプロセッサはどれも高性能
iPhone 7に採用されているA10 Fusionプロセッサを搭載した機種であれば、インターネットをしたり、SNSをしたり、ゲームをするといった普段使いなら特に問題はないのかなと思います。
iPod touch(第7世代)はクロック周波数を少しだけ抑えたA10 Fusionですが、体感速度はなんら問題はありませんし、普通に快適に使うことができます。
旧型のiPhone、iPadを使っていて新しい機種に乗り換えを考えているのなら、A10 Fusion、A11 Bionic、A12 Bionicを搭載したモデルにするのがおすすめです。
- 予算が限られている:A10 Fusion(iPhone 7/7 Plus、iPod touch7、iPad)
- トータルバランスを重視:A11 Bionic(iPhone 8/8 Plus/X)
- そこそこ快適なデバイス:A12 Bionic(iPhone XS/XS Max/XR、iPad Pro、iPad Air 3、iPad mini 5)
- 快適なデバイス:A13 Bionic(iPhone 11/11 Pro、iPhone SE2)
ラインナップが多くて複雑なので選ぶのが大変ですが、どれを選んでも問題はないのかなとは思います。
もし、4インチのiPhone 5sやiPhone SEを使っている方はiPhone SE(第2世代)かiPhone 8に乗り換えるのがおすすめですよ。
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役に立ちました!!!